自己破産に関する知識
自己破産後の生活
自己破産をすると借金がなくなって、返済義務も免除されます。ただし、そのかわりに、必要最低限の家財道具などを除いた自己財産を手放さなければいけません。
そのため生活は大きく変わる可能性が高くなります。しかし借金がなくなることで、新しい生活を始められるチャンスと考えることもできます。
自己破産を検討するほど返済が滞っている場合、あるいは多額の借金を抱えてる場合、債権者からは相当の督促があるはずです。携帯電話や自宅の電話だけではなく、職場へ連絡が来ることもありますし、時には近所の住民に知られてしまうこともあるでしょう。
そのような状況では、夜も眠れないような状態になり、常に不安を抱えて暮らさなければいけません。自己破産によって借金をなくすことで、平穏な日常生活を取り戻すことができるのではないでしょうか。
また多額の借金は、返済が滞れば滞るほど利息がかさみ、膨大な額の借金になります。そのため働いて得たお金のほとんどは返済に消えたり、働いても働いても返済が追いつかないという人も少なくありません。しかし自己破産後は自分や家族の生活のためにお金を使うことができますし、働く時間を減らすことができる人もいることでしょう。
借金の返済が滞って困っている状態では、精神的にも苦しくなっていきます。睡眠不足に陥ったり、家族関係が上手くいかなくなることもあるでしょう。生活を立て直して将来のことを考えるためにも、借金生活はリセットする必要があります。
処分対象となる財産について
自己破産をすると借金がなくなりますが、所有している財産は、最低限の生活用品などを残して、全てを処分しなければいけません。処分すべき財産には住宅も含まれており、たとえ居住している状態であっても、破産管財人が任意売却か競売のいずれかの方法で処分をします。
つまり自己破産をするということは、住む場所を失うことにもなります。しかし自己破産の免責が決定したら、すぐに家を出ていかなければいけないというわけではありません。住宅の購入者が決まるまでは住んでいても構わないので、その間に様々な準備ができるはずです。
なお、自己所有の住宅ではなく賃貸住宅に住んでいても、自己破産を理由に、家主から出ていくように言われる場合があります。自己破産をするほどの状況であれば、家賃を滞納していることも多いので、仕方ないことかもしれません。そのような場合、家主にしてみれば退居を求めるのは当然の主張なので、住み続けたいのであれば話し合いをするしかありません。
それから、自己財産として扱われるものの中には、退職金があります。退職金については、見込額の4分の1から8分の1ほどが、債権者への分配金になると言われてます。また、生命保険を解約して、返戻金が20万円以上あった場合にも財産とみなされます。
ただし、それぞれの裁判所によって退職金や生命保険の解約金をどのように扱うかには違いがあります。これらの財産を所有している場合には、管轄の裁判所に確認をしてください。
個人信用情報の登録について
自己破産をすると、個人信用情報機関に「事故情報」として登録されます。これは自己破産だけではなく、任意整理、特定調停、個人再生など、他の債務整理を行った場合も同じです。また、返済の滞納期間が長い場合も事故情報とみなされて登録が行われます。
それと、自己破産などのために新規のローンやクレジットカード契約ができないにも関わらず、次々と申し込みをすると、それも信用情報の一つとして登録されることになります。このような情報も審査の際には不利なので、注意してください。
ただし自己破産などを含めた事故情報は、一定期間が経過すると削除されます。何年も前の事故情報のせいで、いつまで経ってもローンやカードの審査に通らないということはありません。もしも自分の信用情報がどのように扱われているのか知りたければ、信用情報機関に問い合わせをすれば開示されます。
よく「自己破産をするとブラックリストに載ってしまう」などという言い方をします。しかし「ブラックリスト」というものは存在しませんし、自己破産をした人だけが特別な扱いを受けるわけでもありません。
あくまでも「自己破産などによる債務整理をした」「返済で延滞が生じた」などの事実が、事故情報として登録されるということです。その登録先も、個人信用情報機関という、きちんとした組織なので、不正利用などの心配も無用です。
自己破産によって信用情報機関に登録をされるのを避けることはできません。しかしその後に再び同じ状況をくり返したり、借金を重ねることがなければ、登録情報は削除されることも覚えておきましょう。
保証人がいる場合の自己破産
保証人や連帯保証人を設定している債務の自己破産を検討する場合には、慎重にならなければいけません。なぜなら、自己破産の免責決定が適用されるのは債務者本人のみであって、保証人や連帯保証人の返済義務は、そのまま残るからです。もしも保証人や連帯保証人が債務者本人の代わりに返済ができない状態であれば、同じように自己破産を検討せざるを得ません。
つまり自己破産は、保証人や連帯保証人に多大な迷惑をかけることになります。保証人や連帯保証人を設定している債務については、なるべくなら、自己破産以外の方法で債務整理をするのが望ましいと言えるでしょう。どうしても自己破産以外に手段がなければ、手続をする前にしっかりと話し合うことが大切です。
自己破産を検討しなければいけないほどの状況になると、保証人や連帯保証人に迷惑をかけまいと考えて、一人で悩んでしまいがちです。しかし何もしないでいるうちに、どんどん利息が増えて借金の額が大きくなります。そして結果的にはさらに悪い状況に陥ってしまいます。
そうなる前に、弁護士や司法書士などに相談をしましょう。保証人や連帯保証人への影響を少しでも減らすためにも重要なことです。
なお、自己破産をすることで家族への心配をする人もいます。しかし、家族を保証人や連帯保証人に設定していない限りは、家族が返済する必要はありません。逆に、たとえ家族であっても保証人や連帯保証人になっていると、債務者は免責を受けても、家族に返済義務が生じることになるのです。
自己破産の周知について
借金で困窮しているにも関わらず、自己破産の申立を迷っている理由として、周りに知られるのが怖いということが挙げられます。これは当然の心配ではありますが、実際に知人や同僚に知られる可能性は、かなり低いのです。
確かに自己破産の手続きを始めると、特定の媒体に情報が記載されます。しかし一般的な媒体ではないので、過剰な心配はいりません。
その媒体とは、まず破産手続開始決定の際に掲載される官報です。これは一般的にはそれほど知られているものではありません。
そして免責決定までの間には記載される破産者名簿についても、それほど心配することはないでしょう。なぜなら破産者名簿は限られた人しか見ることができませんし、免責決定後は記載事項は削除されるからです。
それと、裁判所から職場に自己破産について連絡が入ることも、ほとんどありません。ただし債権者によって給与差し押さえが行われたり、債権者の中に職場の人がいると、当然ながら知られることにはなります。
しかし自己破産の事実が知られたとしても、それを理由にして会社から退職を迫られることはありません。会社にはそのような権利は与えられていないからです。
その他に、住民票や戸籍に自己破産の情報が記載されるのではと心配する人もいますが、それはありません。また、選挙権や被選挙権を失うこともないのです。
自己破産をしても、周囲に知られることなく普通の生活を送ることができることを理解しましょう。自己破産について正しい知識を身につければ、余計な心配をしなくても済むのです。
悪徳な弁護士・司法書士の見分け方
自己破産などによる債務整理を検討する場合は、弁護士や司法書士などに相談や依頼をすることになるでしょう。そうなると、まずはどの専門家に任せるかが重要です。
世の中には「悪徳」とも言えるような弁護士や司法書士も存在しているので、気をつけなければいけません。また、自己破産は弁護士や司法書士の資格がなければ手続を行うことができないのに、無資格で違法に手続代行を受けようとする業者もいます。
きちんとした専門家を見極めるポイントは、まずは対応の仕方です。弁護士・司法書士本人が出てこなかったり、面倒な内容を避けようとする態度が見える場合には、その専門家はやめましょう。
もし初めて事務所に行った時に、既に対応がおかしいと感じたら、すぐに相談は止めた方が良いでしょう。それと、報酬に関して明確な説明がない、報酬契約書を作成しない、あるいは報酬設定が必要以上に高いのも怪しいと考えてください。
それから、最近は弁護士事務所や司法書士事務所の広告が増えていますが、過剰に宣伝を行っているところは、あまり信用性が高くない可能性があります。特に司法書士の場合には、弁護士ほどの権限はありません。訴訟代理権や交渉権まで言及して宣伝しているような司法書士事務所は避けた方が賢明です。
このような悪徳弁護士、悪徳司法書士の被害に遭わないように、債務者自身が自己破産について基本的なことを知っておきましょう。そして借金の苦しみから逃れようと焦るあまり、冷静さを失わないようにすることも大切です。
多重債務者につけ込む違法業者
借金の返済が追いつかないと、自己破産について検討し始めることでしょう。それだけ大変な状態では、つい判断力が鈍って、違法業者に関わってしまう危険性があります。違法業者は、簡単に借金ができると思わせたり、債務整理を引き受けるように見せかけて法外な手数料を騙し取ります。
このような業者に引っかかってしまうと借金を減らすどころか、ますます状況が悪化します。また、自己破産の申立を行ったとしても、違法業者を利用した履歴のせいで免責が認められなくなる可能性もあります。以下に違法業者について説明をしますので、よく覚えておきましょう。
・整理屋
多重債務者に、自己破産などによる債務整理の手続代行をもちかけます。しかし高い手数料を取るだけで、自己破産申立の手続などは一切行いません。単に借金の額が増えるだけということになります。
・買取屋
債務者自身のクレジットカードで商品を購入させ、それを価格の何割かで買い取ります。債務者にしてみると、現金がもらえてありがたいと思ってしまいます。しかし手にした現金よりもカードの支払金額の方が多いので、結局は借金が増えるのです。
このようにクレジットカードで現金化することは、クレジット会社からは規約違反とみなされます。債務者には全くメリットがないばかりではなく、ペナルティの対象にもなり得る行為です。
・紹介屋
これ以上の借金ができない人に、「貸してくれる業者がある」ともちかけるのが紹介屋です。そして紹介料として大金を騙し取ります。
もちろんお金を借りることはできません。良心的に見せかけて、とても悪質な手口なので、絶対に引っかからないことです。
自己破産と訴訟・差し押さえ
以前は、借金の返済を滞納し続けている債務者に対して、債権者が給与差し押さえや訴訟などを安易に行うこともありました。しかし2005年の新破産法施行後は、債務者が自己破産の申立を行うと、そのような処置を取ることはできなくなりました。
また、自己破産の申立をして免責決定が確定すると、財産や給与の差し押さえは完全にできなくなります。つまり債務者は、自己破産の申立をすることで、債権者が強硬手段に出るのを防ぐことができるのです。
ただし自己破産申立をしていない段階では、差し押さえをすることができます。債権者が支払督促をした旨の通知が裁判所から届きますが、それから2週間が経過すると差し押さえが実行されます。時間をかけずに借金の回収ができるので、頻繁に使われる督促手段です。
もしも、申立の手続中に提訴されたり、差し押さえが認められてしまった場合には、自己破産申立後に、申立済みであることを債権者に通知しましょう。これで処置を取り下げる債権者もいるからです。
また、通知が間に合わなかった場合でも、意義を申し立てることができます。意義を認めてもらうことができれば、支払督促から通常訴訟に変えることができます。しかし通常の訴訟は時間がかかることも多いので、免責が決定するまでに終わる見込みがあるかを確認しましょう。
なお、自己破産申立前に成立した差し押さえも、免責決定の確定後は無効にすることができますが、これは自動的に停止するものではありません。申立人自身が債権者に差し押さえを停止するように伝えることを忘れないでください。
復権について
自己破産の手続を開始すると、収入を貯蓄に回すことができるようになりますし、保険の契約などをすることもできます。しかし一部の資格については、免責決定を受けるまでに制限を受けることになっています。これにより、該当する資格が必要な業務には就くことはできませんし、それらの資格を取得することもできません。
自己破産手続中に制限される資格としては、公法上では「士業」と言われるものが挙げられます。また私法上にも様々な資格制限があり、保証人や後見人になることはできません。さらに、株式会社の取締役、監査役への就任、合資会社、合名会社で働くことも制限されます。
このように、様々な資格制限で不便な思いをする場合もありますが、免責決定を受けると制限は全て解除されます。この資格制限の解除のことを「復権」と呼びます。
また、復権と同時に完全に借金はゼロになり、公共機関に置いてある破産者名簿からも名前がなくなります。これでほぼ普通の生活を送ることができると言って良いでしょう。
ただし何もかもリセットできるわけではありません。自己破産後の数年間は借金をしたり、新規のローンを組むことはできません。また、税金や損害賠償に関わる債務については自己破産でも免除することはできないので、支払いを続けることになります。
免責が決定すると復権が認められる理由は、自己破産をすることで新しい生活をスタートさせるためです。そのことを忘れずに、再び自己破産をすることがないように過ごしていきましょう。
自己破産について
自己破産は、借金の返済義務が法律にのっとって免除される制度です。借金の返済が滞って支払い不能の状態に陥ってしまった場合に、債務者が自ら裁判所に申立を行います。
破産申立を行うと、破産手続き開始決定~免責申立~免責決定と進んでいきますが、破産申立から免責決定までは3ヶ月から6ヶ月ほどかかります。手続きを始めてすぐに借金の返済が免除されるのではないことを忘れないでください。
また、自己破産は無条件で返済の免除が成立するものではありません。自己破産をすると借金を返済する必要はなくなりますが、その代償として、債務者は財産の大部分を失います。残るのは生活をしていくために必要最低限の財産だけです。
しかしこれは、社会的な立場を否定されるということではありません。いくつかの制限はありますが、世間的には普通の生活をすることができますし、自己破産後に得る収入や財産の使い道は自由です。
自己破産制度の目的は、債務者の救済と社会復帰のチャンスを提供することにあります。借金の返済ができなくなると、夜逃げをしたり、最悪の場合には自殺という結果を招くことがあります。そのような事態を避けるためにも必要な制度なのです。
自己破産というと「悪いこと」「いけないこと」というマイナスイメージが強いのですが、決してそのようなことはありません。もしも、借金のために生活が限界まで悪くなっている場合には、人生の再スタートを切るために自己破産を検討しましょう。
免責不許可事由について
自己破産が認められないケースとしては、免責不許可事由に該当することが挙げられます。免責不許可事由は様々ですが、以下によくあるものを挙げますので参考にしてください。
・無駄遣いによる借金
遊びにお金を遣ったために借金が増え、返済ができなくなってしまったような場合には、免責不許可事由に該当するとみなされます。つまり無駄遣いによる借金で自己破産はできないということです。
・換金による借金
クレジットカードや分割払いを利用して、換金目的で商品を購入した場合、それらの借金は免責不許可事由に該当します。
・借金の虚偽申請
借金やクレジットカードの利用目的について、申請内容が虚偽であると判明すると自己破産の申立は却下されます。
・債権者平等の原則を破った場合
債権者が複数いる場合には、債務者は平等に返済をしなければいけません。これを守らずに、ある債権者ばかりに返済をした場合は、免責不許可事由に該当します。
・不誠実な態度など
自己破産の手続では、きちんと裁判所に出頭し、審尋などでは誠実な対応をしなければいけません。もしも不誠実な態度をとったり、嘘の供述をすると、自己破産申立は認められません。
これらの免責不許可事由の内容は、自己破産の手続ではないにしても、社会的に良くないことです。他にも免責不許可事由はありますが、時には裁量免責で自己破産の申立が受理されることもあります。諦めてしまわずに、自分自身に見直す点がないかどうかを考えることも大切です。



